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最高裁判所第一小法廷 昭和30年(あ)4090号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人尹乙出の弁護人坂元義雄の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、原判決がなした、「本件のように、海中に取り落した物件については、落主の意に基づきこれを引揚げようとする者が、その落下場所の大体の位置を指示し、その引揚方を人に依頼した結果、該物件がその附近で発見されたときは、依頼者は、その物件に対し管理支配意思と支配可能な状態とを有するものといえるから、依頼者は、その物件の現実の握持なく、現物を見ておらず且つその物件を監視していなくとも、所持すなわち事実上の支配管理を有するものと解すべき」旨の判示は正当である。)

被告人三名の弁護人村上信金の上告趣意第一点は、判例違反をいうが、所論判例は、本件に適切でもないし、また、原判決は、所論のように控訴の申立をするには、第一審判決の挙示した証拠に現われている事実だけしか援用できないとか、第一審で証拠とすることができた証拠を控訴審で証拠とすることができないなどとはいっていないから、その前提を欠き、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。同第二点は、第三点中判例違反をいう点は、原審で判示していない判断を想定しこれを前提とするもので、不適法たるを免れないものであり、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、第一審判決が証拠としている被告人等以外の各関係人並びに被告人三名の供述調書は、弁護人が証拠とすることに同意しており、証人高橋清光の証言は、伝聞証拠でないこと明白である。)

よって、刑訴四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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